2018年4月16日月曜日

水野弘元先生の『仏教の基礎知識』(1971年初版、春秋社)より。 厳しいお言葉だけど、僧侶としては肝に銘じておかなければいけない。 今日の日本の仏教は、寺院と僧侶がこれを代表しているが、一般の人から外部的に見るかぎり、日本の現在の仏教や寺院は過去の遺物に過ぎない面も少なからずある。 寺院は死者の葬儀や法要を営む場所であるか、現世利益的な呪術や祈祷をなす祈祷寺院であるか、過去の文化財としての建造物・仏像・庭園などを見せる観光寺院であるかであって、そこには世の人々の魂を救い、生きる力を与えてくれるような人間学としての仏教は、まったく見出されないというのが事実であろう。 少なくとも一般民衆、とくに若い人々には、伝統的な仏教寺院や僧侶は、右のような印象を与えている。そこにはかれらの心を引きつけるものがほとんどない。むしろ若い人たちは宗教信仰としては、新興宗教なでに入っていくが、それは新興宗教には、かれらを引きつける新鮮さや若さや魅力があるからである。 しかし実際には、古い仏教に属する人々でも、仏教本来の人間学を説いている者もあり、また民衆を指導教化するために大いに活躍している者もあるけれども、大部分の寺院や僧侶は伝統の上にあぐらをかき、真の仏教を民衆に知らせ、かれらの魂の救済をなすという仏教者本来の任務を怠っているために、一般民衆は仏教がどのようにすばらしい教えをもっているかということを知らされず、そのために仏教は現代には役に立たない過去の遺物であるかのように考えられ、若い人たちから無視され敬遠されているのである。これは仏教の真相を広く知らせることをしなかった仏教者の怠慢であるとしなければならない。

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