2017年8月22日火曜日

悪人正機

浄土真宗の教えには「悪人正機」という言葉があります。とても有名な言葉かと思います。もともとの出拠は法然聖人ですが、親鸞聖人のお言葉を集めた『歎異抄』にこの意がでてきますので、親鸞聖人の教えの特徴と考えられることが多いかと思います。
悪人は善人悪人の悪人。
正はまさしき。
機とは救いの対象、めあて。
ですから、悪人正機とは阿弥陀如来の他力本願の救済は悪人を正しきめあてとしていることを表しています。
仏教には、仏さまは良いけれど私が言ってはいけない言葉があります。この悪人正機はそのひとつです。私が私の上で悪人正機と言うとき、そこに自身の悪を恥じる姿はありません。悪人正機とは、自身の罪悪を恥じ悲しむ者に対して仏さまがおっしゃる言葉なのです。
同じように仏さまだけが言うべき言葉があります。「そのまま救う」という言葉です。仏さまと、私と、教えを医療の関係で喩えることがあります。仏さまは医者、私は病人、そして教えが薬です。お医者さまは病人に対して「そのまま病院に来なさい」と言います。治してから来なさいとは言いません。また、病人はあるべきでない状態にあるから病人です。決してそのままで良い状態にはないのです。「このままで良い」訳がありません。「そのまま救う」というのは仏さまの大悲の言葉であって、それを「このままで良いのだ」と考えるのは私の自分勝手な都合のわがままでしかないのです。
仏教は私の本当を教えてくれます。私の本当を仏さまは「悪人」と呼ばれました。「悪人を必ず救う」とおっしゃった本願のお言葉を私たちはもう一度大切に考えてみるべきですね。

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